細い路を通り抜け、すぐにテベレ川まで出られた。テベレ川沿いは大きな街路樹がずっと並んでおり、その下に心地よい木陰を作っていた。川沿いを歩くと爽やかな風が顔に心地よい。
実は私は川沿いを歩くのが大好きなのである。私は東京の都心に近いところに住んでおり、隅田川沿いを自転車通勤している。隅田川沿いは、隅田川テラスといってきれいに整備されており、桜の並木が続いているところもある。私の通勤路もやはり桜並木が続いており、桜の咲く4月はもちろんのこと、どの季節もそれぞれ違った美しさをもつ道で、毎朝朝日に輝く隅田川を横にみながら自転車で走っていると、眠くて不機嫌な朝でも「あ〜幸せ」と思うのである。プラハのモルダウ川にしろ、これから行くフィレンツェのアルノ川にしろ、川は美しい街をさらに美しくする役割を持っている気がする。行ったことがないけど、パリのセーヌ川も同じだろうと私は想像する。やはり川沿いはいいもんだ、と上機嫌で歩く。そしていよいよ橋をわたって対岸に渡ってみた。
橋から西の方角をみると、いよいよあの超有名なサン・ピエトロ寺院が見えた。

建物の色のせいか、空気のせいかわからないが、サン・ピエトロ寺院はなぜかうっすらと白くかすんでいた。まるで絵のようでもあり、そこだけ異次元の世界のようでもあり、なんとも幻想的な景色となっていたのである。やはり、宗教的に偉大な建物はそのようなオーラを放っているのか、遠くから見てもとても美しい建物であった。
サン・ピエトロ寺院の近くにある、サンタンジェロ城という建物の前を通り過ぎた。この建物は名前がCastel S.Angeloというだけあって、城の上に天使が剣をもって羽を広げている。そもそもローマ時代にハドリアヌス帝の墓としてつくられたらしいが、その後要塞、法王の住居、牢獄とさまざまな用途で使われていった。見た目は城というよりも、要塞か牢獄といった印象である。現在では、内部はサンタンジェロ国立博物館になっているが、今回私たちは中には入らなかった。というのも、7日間という短い行程では、イタリアに数多くある美術館や博物館の全てには入ることができないので、本当に行きたいものしか見ないことにしたからだ。
サンタンジェロ城の前にもテベレ川にかかる橋があるが、この橋はサンタンジェロ橋といい、橋の両側には天使像が並んでいる。まるで橋を渡る人を見守っていてくれるようだ。その像一つとっても、大きくて美しく、芸術的価値がありそうな代物なのである。橋一つとってもこの芸術的感覚、やはりイタリアってすごい・・・。
サンタンジェロ城を通り過ぎようとしたところ、城の前の道路になぜか金色のツタンカーメンの像がぽつんと立っていた。おや、なぜこんなところにツタンカーメンが???って思ってよくみると、なんと人間である!ぴくりとも動かず、本当にツタンカーメンのオブジェみたいで、かなり笑えた。

この炎天下の中ご苦労様です、と彼(彼女?)にねぎらいの言葉をかけてあげたくなった。
さて、サンタンジェロ城の前から西の方角を見ると、まっすぐな広い道路が伸びており、その突き当りにはサン・ピエトロ寺院がどーんと構えていた。

いよいよ来たな、という感じである。その真っ直ぐな路の両側には、街灯がずらりと並んでおり、真夏の真昼間であるにもかかわらず、オレンジの光が灯っているのであった。このオレンジの街灯と正面の白くうっすらかすんでいる絵のようなサン・ピエトロ寺院の組み合わせが、またなんとも言えない。
「わあ〜、きれい!」なんて最初は喜んで歩いていたが、サン・ピエトロ寺院まで思ったよりも距離があった。しかも、真夏の太陽が容赦なく照りつけ、からからに干からびそうだ。木陰に入ろうにもお店以外、陰になるようなところはない。とにかく、サン・ピエトロ寺院のところまで行き着こうとがんばって歩きとおした。着いた時にはかなりへとへとになってしまい、寺院の前に広がるサン・ピエトロ広場を突っ切る元気さえなくなり、広場をぐるりと囲む回廊の中で一休みすることにした。
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